パワーストーン

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立ち直るきっかけをくれたパワーストーンの指輪

どんな人間でも生きている限り、人生の分岐点がある。
その言葉は私の忘れられない言葉です。
私がその言葉を教えてもらったのは、私が大学に入学したばかりの頃でした。
私は自分の将来に対しての計画や目標というものがなく、ただ勉強するのは嫌いじゃなかったので大学に通うことにしたのでした。
そんな私でしたが、大学に入ってから夢中になれるものが見つかりました。
それが山登りでした。
今でこそ山ガールと言われて、若い娘が集ってお洒落な格好で山を登っている姿をたくさん見かけます。
私が娘時代の頃はお洒落な服装など皆無で、地味で汚い恰好というのが定着していました。
ですが私は山登りの魅力にハマってしまったのです。
重い荷物を背負いながら一歩一歩と頂上を目指して歩き、頂上に到着したら荷物を降ろして下界を見下ろす。
それが何とも言えず爽快な気分になるのです。
山登りは私に合っていたのかもしれません。
私は大学の山岳会へ入会すると、すぐに一人の青年と意気投合しました。
それは私と同年齢の山好きで無口な青年でした。
私は彼のことが大好きになり、私達はまもなく恋人として付き合うことになったのです。
私達は若くて元気で伸び伸びとしていて、山ならどこにでも出かけてました。
山登りをしている私はとても元気で、その心は春の突き抜けるような青空みたいに清々しかったのです。
そんな私を見て彼が言っていたのが、人生の分岐点の言葉でした。
私の伸び伸びした清々しい心持ちを忘れないように、と彼は言いました。
そうすれば何があっても私は幸せに生きられる、と彼は続けました。
私は彼の言葉に笑って頷き、なんでそんなふうに予言みたいなことを言うのかと、彼に聞きました。
彼はただ笑って、さあ、何となくそう思ったからと答えました。
月日が経つと、私の生活に変化が起こりました。
彼との山登りも楽しいけれど、私は他にも友達が出来ました。
私ヘ別な友達との付き合いも楽しかったので、私は彼と前ほど一緒に山登りに行かなくなりました。
でも私と彼は恋人としての付き合いは続いていました。
私は彼を山登り以外の友達と飲みに行ったり、映画に行ったりしようと誘いました。
でも彼は自分の居場所じゃないからと言って、一緒に行動しようとしませんでした。
彼にとって街中で遊ぶことは下界の生活でした。
私はそんなふうに思っている彼に対して、初めて不満をぶつけました。
じゃあ山登りをしない人は劣っているということなの、という私に彼はすぐ謝りました。
そして一言、馴染めないんだごめん、と彼は言いました。
でも私はまだ怒っていて、彼に口を利きませんでした。
それが彼との最後の会話になりました。
その年の冬、彼は冬山で帰らぬ人となったのです。
私は泣きました。
そしてずっと後悔するようになったのです。
なんで彼と仲直りしなかったのかと。
ずっと彼への思いが私の胸に突き刺さったままで、私は苦しくてたまりませんでした。
そんな気持ちから逃れようと、私はよく一人旅をするようになりました。
そして旅先のふらりと立ち寄った店で、私は綺麗な指輪に巡りあったのでした。
ピンク色の石はパワーストーンと呼ばれ、本当に心が癒される色でした。
このとき私は彼の言葉を思い出したのです。
私は自分の人生の分岐点を、しっかりと顔を上げて選んでいこうと決めた瞬間でした。