パワーストーン

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私のパワーストーンはおじいちゃんのメノウ

それは12月の半ばを過ぎた、寒い日の出来事でした。
私の祖父が危篤だという連絡がきたのです。
この時私は、夫と買い物をするために出かけようとしていました。
街中にはクリスマスソングが流れていて、どこかお祭り気分でしたが、祖父の知らせを聞いてしまった私と夫は、もうそんなものは目にも耳にも入りませんでした。
バタバタと慌ただしく準備をすると、私と夫は車で高速道路に向かいました。
祖父が入院してから、もう1年ほどになります。
原因は脳梗塞でした。
祖父の年齢は80歳を過ぎていたので、もう何があってもおかしくないのですが、やはり自分の祖父ということになると、私のショックは大きいのでした。
ずっと農作業をやり続け、お酒が大好きでおおらかな祖父を、私は大好きでした。
それが1年前に畑の中で倒れてしまい、そのまま意識が戻らず今の今まで病院のベッドの上で過ごしていたのです。
人間は寝たきりになると、若い人でも筋肉がものすごい早さで衰えてしまうと言われています。
祖父の頑丈な体は見る見るやせ細り、容貌もギョッとするほど変わってしまいました。
祖母はそんな祖父の姿が哀れだと言って、お見舞いに行くと祖父の顔を覗き込んで泣いているという話を、私は母から聞きました。
私は身近な人間が、死に近づいていくという事実を目の当たりにするのは初めての経験でした。
私と夫は急いで祖父の入院する遠くの病院まで来ましたが、到着したのは夕方でした。
祖父の様子は、頬は痩せこけていましたが、酸素マスクをして眠っているようでした。
医者の話では、今夜が峠だということでした。
長旅で疲れた私と夫は、取り敢えず私の実家へ行くことにしました。
道にはまだ雪は積もっていなかったのですが、やはり無理があったのでしょう。
電燈のない暗いカーブで、夫はハンドルを切り損ねてしまいました。
私が助手席で、あっと思った瞬間に車は道を外れ、斜面へ滑り落ちてしまったのです。
私達夫婦にとって恐ろしい瞬間でした。
でも幸いなことに私も妻もかすり傷ぐらいで、体は大したことはありませんでした。
私の両親は血相を変えてやってきて、無事な私達を見ると涙ぐみました。
母は、不幸が不幸を呼ぶんだと言いました。
私達夫婦は両親に、事故を起こしてしまったことを謝罪しました。
私は母にこれを見て、とバッグの中から赤い数珠を取り出しました。
それは幾つかの玉が、割れていました。
この赤い数珠はメノウという種類の石が使われていて、私が祖父から貰ったものでした。
祖父は私に赤い数珠を渡しながら、これはいつか必要になるものだから、と言っていました。
私がそのことを母に話したら、おじいちゃんは離れて暮らす孫のあんたが心配で、わざわざ和尚さんに頼んでお経をあげてもらってから、これをあんたに渡したんだよ、と母は言いました。
祖父は明け方、天へ旅立ちました。
私は祖父へ一言お礼を言えなかったのがとても残念でした。
おじいちゃん、守ってくれてありがとうと、それだけでも私は言いたかったです。
祖父のくれた数珠は壊れましたが、私は数珠の無事だった玉を使ってブレスレットを作りました。
このブレスレットは今では、わたしにはなくてはならないパワーストーンのアイテムです。